2018/08/07

月島三丁目南地区再開発

環境建設委員会 資料

再開発区域の航空写真 写真の道路挟んで右側が、月島第一小学校

南地区 上空より

月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業(「本事業」)は、①計画地(「月島三丁目南地区」=施行区域面積1.0ha)が、東京都中央区月島三丁目27番(15号除く)、28番、29番、30番で、現存建物がすべて取り壊され、②「28番・29番・30番(A敷地5640㎡)」は、地下1階・地上50階・高さ190m・750戸の超高層分譲マンション(鉄筋コンクリート、一部鉄骨造)が建設され、③「27番(B敷地935㎡)」は、地上2階建てのビル(鉄骨造)が建設されます。④工事期間は、2021年~24年で、2024年竣工の予定となっています。

本事業は、借家人や周辺住民に対しては、なんらの意見を反映させる機会を与えられることもなく、明らかにされたのは、平成29年4月27日と5月7日に開催された住民説明会の場でした。

地権者のうち、都市計画手続きを進めることの同意書(以下、「同意書」という。)を区へ提出した割合は、7割8分と低いにも関わらず、都市計画手続きが進められ、平成30年2月1日都市計画審議会を経て、同月28日に都市計画決定がなされました。超高層の計画ありきで進められています。

中央区のまちづくりの姿勢含め本事業の問題点を挙げます。

第1、都市計画法で求められる規模の妥当性を欠くほどに超高層の分譲マンション計画

現在、月島・晴海の近隣地区に13の再開発計画が進行中で、うち、月島には、同じ町内にもう一つほぼ近接して、本事業の約1.5倍の規模の「月島三丁目北地区(1.5ha、三街区のうちA街区が地上59階・高さ199m・住宅1120戸・竣工2025年)」が、都市計画手続きに入り、本年7月の都市計画審議会審議、12月の都市計画決定が予定されています。

月島三丁目北地区は、区道廃道をまでして、路地に交通問題を引き起こすと共に、本事業との複合日影や風害を広汎に周辺地域に来してしまうことが考えられます。

隣の1丁目に建設中の「月島一丁目西仲通り地区(0.7ha、地上36階・高さ125m・住宅503戸・竣工2021年)」、その斜め隣に平成27年竣工された「月島一丁目3・4・5番地区(1.0ha、二街区のうちI街区53階高さ181m・住宅705戸)」があります。
近隣では、「勝どき東地区(3.7ha、住宅3120戸・竣工2026年)」、「豊海地区(2.0ha、住宅2150戸・竣工2025年)」、さらに、晴海選手村跡地「晴海五丁目西地区」5,632戸の住宅転用の時期と本事業の竣工が重なっています。

本事業竣工後約10年の2033年〜38年をピークに中央区の人口も減少に転じますが、将来にまで、居住者で果たして埋まるのか疑問です。

第2、住民の合意形成が不十分

1、地権者の合意形成
当初、地権者103名中82名が同意書を提出しているところであったが、本事業について疑問を抱き、同意書を撤回する者が3名出たため同意率76.7%に低下し、8割にも達していないにもかかわらず、この9月に都市計画原案説明会(都市計画法16条)を行う等都市計画の手続きを区は開始しました。
9割以上の同意率で開始するという今までの区の慣例に反しています。撤回した者の理由は、準備組合(事務局員は大成建設社員、コンサルタントは本郷計画事務所)から、「もう決まったことだから。」とか「同意していないのは、あなただけだから」という説明を鵜呑みにして同意してしまったことを後悔していたためであるといいます。

同意率の低さとともに、同意の真意が疑わしく、いわゆる“錯誤”に基づく同意もかなりあるのではないかと疑われます。

2、地域住民の合意形成
区民だれもが、まちづくりに平等に参加する権利を有することは、本年3月第一回定例会の私の一般質問に対し区長答弁がされています。

本件事業の策定過程においては、区が実質的には主催する形で開催された準備組合の前身である「協議会」において、借家人ら住民の参加が平成25年4月から認められませんでした。
その後、まちづくりの進捗状況が広報されることなく、住民らが本件事業を初めて知ったのは、昨年4月27日の月島三丁目南地区市街地再開発準備組合による住民説明会の場でした。

住民らは、準備組合理事長と昨年末に住民同士の話し合いの場をつくる約束を締結しましたが、その約束が今まで反故にされています。
本件事業について開かれた場において住民同士で話し合われたことは、未だかつてなく、まちづくりとしては、異常なことです。
借家人ら住民が本件事業のまちづくりで排除されてきていることは、区の公文書でも明らかになっています。
住民らは、やむなく、準備組合事務局と3月12日に月島区民センターホールで話し合いを持つことを約束しましたが、それも準備組合側が当日突然欠席されました。

このように本件事業では、住民が平等にまちづくりに参加する権利が侵害された形で進められています。
それどころか、区や準備組合がまちづくりの説明責任を果たさないまま策定立案をすすめてきたことは、基本計画で謳う『協議型まちづくり』に相反する姿勢であるし、まちづくり基本条例の最低限のルールにも反しています。

第3、都市再開発法(以下、「都再法」という。)3条の施行区域要件について、

「なぜ、50階が必要なの?」と近隣住民がまず抱く疑問と合致しているが、都再法3条3号について、特に要件を満たしていない可能性があります。

施行区域は、
①A敷地では、施行区域全体を、都道(清澄通り)を含め道路が四方を取り囲み、かつ、敷地内に4本の路地が通っており、歩行空間は、十分ある。そもそも月島の道路率は、約23%とも言われている。当該区域に隣接する27番15号には、2,282㎡の公開空地があり、清澄通りを挟んで月島第一小学校もあり広場も十分にある地域である。
よって、公共施設がないとは解されません。
②土地の利用が細分化されていることについても、地区内では既に、敷地面積が50㎡を超える建物が、107ある建物中、37(34.5%)存在し、建物面積が50㎡を超える建物は、21(19.6%)存在します。
細分化した土地の状況においても、現行地区計画の制度の中で、個別建て替えがなされ、現在、「建築基準法第2条第9号の2」に規定する耐火建築物の割合は、約4割に達し、建物の耐用年数が2/3以下の建物は、建築面積で85%、敷地面積で84%です。
土地の利用の細分化のため個別建て替えが著しく難しい状況は生まれていません。

なお、中央区の説明では、「本件区域は、敷地面積合計約0.6haに建築物が107棟あり、土地の利用が細分されている」「同区域内には、老朽化した木造建築物などの建築物が多く立ち並んでいる」というのみです。
単純に0.6ha÷107棟=56.1㎡になるから細分化といえるのでしょうか。
当該地区を具体的に取らえるころなく、「土地利用が著しく不健全である」と評価することは、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いており、当該地区を同条3号に該当するという判断は誤りであると私たちは考えています。

第4、月島の路地文化とコミュニティーについて

月島は、1891年(明治24年)埋め立てが開始されました。誕生して125年以上の歴史があります。東京大空襲の被災を逃れ、江戸時代の町割りによって作られた路地や三間・六間道路、長屋住宅の街並みが残っています。世界遺産登録を目指す動きも地元にはあります。
木造長屋の耐震性の向上や防火に課題はありますが、現状では、逃げ出す場合に、戸を開ければすぐに路地に出られ、近所同士も声が届く範囲であり、声を掛け合い助け合いながらの避難が可能です。さらに、平常時より、毎日声を掛け合い、お互いがお互いを見守る地域コミュニティーが育まれており、今でも安心安全に日常生活を送ることができています。その地域のコミュニティの力は、例えば、認知症のかたの高齢者を見守ることにも役立てられています。
さらに、路地裏には、緑視率50%以上の箇所もある緑の風景や、コミュニケーションの場があります。最近では、芝浦工業大学工学部建築学科志村研究室の働きかけで、路地を使った子ども達の落書きイベントが行われ、好評です。

第5、副区長がなした予算特別委員会における虚偽答弁

本事業について、平成29年3月16日に町会長らに示すために区が作成した資料と、同年9月20日開催の都市計画原案説明会で配布された資料は、まったく同じ「計画概要」の図面でした。

予算特別委員会委員が、平成29年3月22日の予算特別委員会において、本事業に対し平成29年度に計上されている予算1億5千8百万円の内容を調査するために、都市計画の案の前段階のようなものでも構わないので、計画素案を提出するように区に要求しましたが、吉田不曇副区長は、「絵がまとまっていないから、示しようがない」と答弁をしました。町会長への説明会で使用できるほどの計画概要を既に持っていながら、「ない」との答弁は理解しがたいです。

なお、区の言い分は、「準備組合作成の計画概要案は、準備組合との協議等を踏まえた結果を反映していないことから、区議会へ提出する資料としては適切なものではないと判断したことによる答弁であり、虚偽ではない」ということであります。
中央区のまちづくりの問題の核心部分であると考えるが、議会には「計画概要案」の段階で是非を問うどころか秘匿して実質的な審議を避ける一方で、町会長には、是非を形式的に問うてまちづくりが進められています。
一民間の任意団体である準備組合が、非公開で検討を進めて来たものが、公開後半年ぐらいの短期間で、計画ありきのまま公共事業となって行くことに疑問を抱きます。
区は、このまちづくりの手法を、「本件事業を計画し活動してきた実施主体は準備組合であり、区が行うことは本件区域に関する都市計画決定や行政指導である」としているが、せめて、素案の早い段階から議会で審議を行っていただきたいです。

そして、本事業のような大規模開発では、必然的に失われることとなる大切な地域コミュニティを守るためにも、一度立ち止まり、まちづくりの民主的な手続きの下、月島の再生を考える必要があるのではないでしょうか。個別更新や共同建て替えによる街の再生の代替案も検討すべきです。