2018/09/10

街と共生する小さな再開発

面的開発と個別建替の中間項を

中央区では良好な街並みの形成と住・商・工が調和した魅力ある複合市街地を形成するため、平成9年から街並み誘導型地区計画を導入し、個別建替えを促進するとともに、面的整備も併せて促進しています。各々の地権者による個別建替は、建替資金を捻出することが難しい状況が多く、なかなか進まない状況がある一方で、面的整備としてのタワーマンションによる再開発事業は、事業期間が長期に及び高齢者の生活に負担をかけること、⾧期目線でのメンテナンスの問題、膨大な区分所有者が発生する施設の建替え問題が放置されたまま、進んでしまっています。
ここでは、個別建替と面的整備の中間項として、中小規模な共同建替を提案します。

等価交換で地権者の負担を極力減らしながら街を更新する

小規模な共同建替えは、ディベロッパーを介さない「コーポラティブ方式」により行います。また、等価交換方式により、地権者の負担を極力減らしながら、防災と両立した持続可能な建物と街の更新が可能になります。
例えば、路地に面する長屋3軒の共同建替を行う場合、100万円の負担で新しい住居に入居することができ、3間道路や6間道路に面する場合は、より事業性を向上させることができます。

(隣り3軒の共同化モデル)

景観を引き継ぐことで、文化・気質が引き継がれる

景観が変わり、その場所で生活する人が代替わりすると、地域固有の文化は失われてしまいます。時代を超えて人々や生活の文化や気質を引き継ぐことができるのは、景観だけではないでしょうか。
ここでは、共同建て替えの事業性をクリアしながら、次世代に景観を引き継ぐため、下記5項目に基づきデザイン案を検討しました。

① 月島地区の街並み誘導型地区計画に準拠する
② ⾧屋の景観リズムを継承するため、建物立面は2 間で分割する
③ 上階にしたがい徐々に壁面をセットバックさせる
④ 路地側には可能な限り「みどり」を設える
⑤ 路地に向かって平入の勾配屋根とする

(路地の再生案) 

作成・提供:沼野井諭建築設計事務所一級建築士事務所(http://www.nmnsts.com/)